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Give up-オフコース・ストーリー-(山際淳司)を読んで

今回はオフコースの本の紹介です。

 

Give up-オフコース・ストーリー-

山際淳司著。

 

NHKで放送されたりしていた、伝説の武道館ライブの10日目が1982年6月30日。この日が鈴木康博さん(以下ヤスさん)がオフコースとしてライブをした最後の日でした。翌年1983年8月31日でヤスさんは正式に脱退して、以後ソロとして活動し、残ったほかのメンバーは(いろいろあって)オフコースとして継続して活動していくことになりました。

紹介するGive up-オフコース・ストーリー-は1982年8月1日発売。ということは、この本はそのヤスさんが抜けるか抜けないかのごたごたしていた時期を描いた作品です。

 

※以下、ネタバレかなり含みます

 

語彙力をなくして率直に申し上げますと、めっちゃ面白かったです!

後追い世代のオフコースファンとして少し認識が間違っていたことに気づかされました。ヤスさんに抜けないでほしいってメンバーやスタッフがごたごたしていたのかと思ったら、それだけじゃなかった。ヤスさんが抜ける=オフコース解散→解散をどうやって世間に知らせるか、そもそも解散だと発表するか、という大人の事情も含めた問題だったようです。

 

話し合いがなかなか進まない。その状況を描きつつ、メンバーやマネージャーそれぞれの生い立ちや胸の内、インタビューを通してオフコースを深堀りしていくというのがこの本の内容です。

 

ヤスさんが抜けると決め、それをメンバーやスタッフに伝えてから話が進まなかったことへのいら立ちがあったというようなことをどこかで読みましたが、それを裏付けるようでした。メンバー、スタッフ間で何度も話し合いをするけれど、やっぱりオフコースがなくなるのは嫌だから、ヤスさんがいなくなってしまうのは嫌だから、なかなか話が進まず話題がそれてしまう。

オフコースはヤスさんが抜けた後4人で活動することになるわけですが、そのことにヤスさんが拍子抜けしたというエピソードも、ずっと解散前提で動いていたからこその驚きだったのだということがつながりました。

 

この本を読むと徐々に5人の歯車が壊れていったことがわかります。途中で加入した大間ジローさん(以下ジローさん)、松尾一彦さん(以下松尾さん)、清水仁さん(以下清水さん)がバックとしてではなく、メンバーとして馴染んでいく。それは小田和正さん(以下小田さん)とヤスさんが望んだこと。それによってオフコースの音楽のレベルが高くなっていく。その一方で、なぜかヤスさんだけ取り残されていることが出てくる。

誰のせいでもないし、小田さんとヤスさんの関係が悪くなったわけではない。そもそもすべてが完璧なことなんてないのかもしれない。ただ、小田さんを前面に出していく方針が進んでいく中で、5人で活動していく中で、ヤスさんが取り残されてしまったような気がします。当時の映像を見る限り、4人ではしゃいでいて、ヤスさんは心なしか居心地が悪そう。それによってオフコースにどんな曲を書けばいいかわからなくなり、ますます居心地が悪くなる。メンバー4人はヤスさんのことが嫌いなわけじゃない。好きだけど、微妙なズレによって距離ができていく。

売れることの代償として、小田さんはヤスさんを失ったとも言えるのではないでしょうか。この本では書かれていませんでしたが、それは小田さんにとってかなりのダメージだったというのは武道館ライブの映像を見てもわかります。

1つだけ確実に言えることは、誰も悪い人はいないということだと思いました。小田さんヤスさんが三人でやっていたころが良かった、三人のメンバーが入ったから均整が壊れたのだ、と思う人がいるかもしれないけれど、それは違うと思います。

 

仲がいいということの定義も難しい。小田さんとは音楽だけでつながっていたと当時ヤスさんは淡々と話していたようですが、本当にそうなのかなあとも思います。飲みに行かなくても、共通の音楽が好きというだけではそんなに長く一緒にいることができないのでは、と。ヤスさんは小田さんに対してあっさりした印象ですが、小田さんはあっさりしているようでヤスがいないとだめだと思っていた節がかなりありそうです(そして他のインタビューなどを読むと実際に4人のオフコースとして活動していく中で痛感したよう)。

 

オフコースは解散してしまうのか。その経緯は単純じゃなくて、当時の新聞や週刊誌などで取り沙汰された分では憶測が含まれており、誤解を生んでしまっていた。だからこそ、ファンは読んでほしい。この本を一冊読むことで当時の裏がすべてわかると思います。

 

メンバー5人と、それを客観的に見る著者の姿勢もいいです。著者はノンフィクション作家。スポーツ関係のノンフィクションを書いている人で、批評家ではありません。だからあくまでもメンバーや関係者などの言葉、雑誌などの資料からまとめられていて、読みやすくて、最近読んだ歌手についての本でも私的にはベストです。

 

他に、いくつか印象に残ったことを。

 

自分で書いた曲をヒットさせたいという気持ちがある。日本のほかの人が歌ってくれてもいいし、外国でヒットするんでもいい。

そのためにも、一度、オフコースというグループから離れてやってみなければいけないと思った。

とヤスさんが語られていますが、この点は郷ひろみへの提供曲「素敵にシンデレラ・コンプレックス」(作詞:阿久悠、作曲鈴木康博、1983年発売、オリコン9位、NHK紅白で歌唱)で見事に達成してますね!

 

松尾さんとジローさんについて。お二人はオフコースに入る前、アルフィーと同年デビューでジャネットというグループにいました。ジャネットのデビューしてからの扱いが、作詞作曲は専業作家によるもの、アイドル的な扱い、こうしろああしろと周りの大人たちに言われるがまま。そのあたりがアルフィーとそっくりだと思いました。

ジャネットは解散してしまい、松尾さんとジローさんはオフコースに入ったことで力を発揮してヒットグループになる。

アルフィーはレコード会社との契約を解除して新たに再スタートを切り、時間はかかったけれどヒットした。

違う道ですが、成功にはいろいろな道があるのだと思いました。

 

小田さんの早稲田大学の大学院卒業時に提出した論文の内容、その発表の時にしゃべった内容も記載されていて興味深かったです。小田さんがつけたタイトルは「建築への訣別」(最終的に「私的建築観」として提出)でしたが、専攻していた建築だけでなく社会批判、自分たちの音楽が世間に受け入れられないことへの怒りが含まれているようにも思いました。これは全文読んでみたいのですが…読めるところを知っている方がいたらぜひ教えてください。

 

オフコース・カンパニーという会社をつくったり、印税やレコード盤の売り上げ、ライブをした時などにかかるお金、そのお金を誰がもらうのか、といった話が具体的な数字を上げつつ生々しく書かれていたのも興味深かったです。

 

布施明桃井かおり、タイガースがちらっと出てくるのですが、その言葉が印象的すぎます。

 

まとめますと。

その時のオフコースの状況を見事に切り取った作品!

複雑な話なので(だからこそ一冊の本にまとまっているわけですが)、機会があればぜひ本を読んでほしい!このブログはかなり私的な見方が混じっているので、ご自身で実際に本を読んでオフコースの5人の関係について考えてみて欲しいなと思います。中古でも割と手に入りやすいようですし…!

 

全部褒めるのもなんなので、ちょっと批判を。

①タイトルについて。

Give upというのは著者が決めたと本文にも書かれていますが、インパクトを求めすぎていて内容とは離れている気がします。あきらめたわけじゃなくて、ヤスさんは次のステップに進もうとしている、メンバーはそれぞれいい形にオフコースを持っていきたいと思っている。

そこが本文にきちんと描かれていた分、タイトルがなんだかもったいない気がしました。

 

②表紙と裏表紙について。

どっちも小田さんの横顔なんです。

ヤスさんが抜けることによる解散騒動なので、表が小田さんだとしたら、裏表紙はヤスさんにしてほしかった。それか小田さん以外の4人。裏表どちらも小田さんの顔だから、オフコース小田和正なのがさらに強調されてしまっている(本文を読めば違うことはわかるけれど)。

そもそも表も裏も同じ写真で、デザイン手抜きしてない…?っていうのが正直な感想です(デザイナーさん、言い過ぎてごめんなさい)。

 

 

Give upは図書館で借りた本ですが、実はオフコースの本では「はじめの一歩」①②も現在借りています。こちらはぱらっと見た感じ、そんな深刻な話というよりオフコースの歴史がわかりそうな感じなので読むのが楽しみです。

さて、今年はブログ更新があまりできず、自分的には悔しい年でもありました。メモはあるけど、インプットはたくさんしているけれど、長い文章にまとめることができない。時間がないのと、文章がうまくまとまらないから、と下書きに入れたままにしているものが多いからです。この文章もいまいちまとまりが悪い、と思いつつエイっと公開しちゃいました。

自分へのハードルの上げすぎかなとも思いますが、大好きな歌手や歌たちに興味を持ってもらえるように、これからも精進していきたいと思います。

来年も更新頻度は低いと思いますが、ブログは続けていきますのでこれからもよろしくお願いします。

そして、他にもいろいろ進めていきたいことがあるのでそれも、形になったらブログで発表しようと思います。

それでは読んでくださった方に感謝しつつ、私は寝ます。最後まで読んでいただきありがとうございました!